文字捨て場

不要になった文字たちを供養する場所

宝くじで夢を買うとはどういう事なのか

「宝くじは儲けるために買うのではなく夢を買っているんだ」というセリフはよく耳にします。かれこれ5億回は聞いたセリフです。毎秒聞いてる。

今回はそんな何の説得力もない欺瞞に満ちた痴れ言に対し、数字というリアルな論理武装でもって徹底応戦していきます。ただし「買うだけ損だよ」みたいな結論も同じくらいありきたりで聞き飽きた内容なので、夢を買うのではなくマジで儲けるために買うのも無しではないんだぞ、というイカレた説明に挑戦してみる。

なぜ夢を買っていると言われるのか

宝くじとは、当選するとお金がもらえるクジです。景品は夢ではなくてお金なので、普通に考えて宝くじを買うのはお金のためです。では、なぜ人々は「夢を買っている」という名目で宝くじに手を出すのでしょうか。

その主な理由が期待値です。

 

例えば1回1000円でサイコロを振って、1~3なら2倍になり、4~6なら没収される。

これは期待値100%です。運の良し悪しで大勝ちしたり大負けしたりはあり得ますが、50%の確率で2倍になり50%の確率で0倍になる、つまり平均すると1000円払ったときに平均して1000円が帰ってくるので、1000/1000=1.0、期待値100%ということです。

 

さて、では宝くじの期待値はいくらなのか・・・ですが、総務省発表の資料によると宝くじの期待値は何とオドロキの45.7%!

1000円払ったら平均して457円が帰ってくる感じです。言い方を変えると1000円払うごとに平均して543円損をする。それが宝くじの期待値です。低すぎる。確率的には買えば買うほど赤字なんです。

この期待値の低さがゆえに「儲けるために買うのではなく、夢を買ってるんだ」みたいなセリフが世にはびこっているわけです。もはや負けて当然の勝負にお金を投じるための単なる言い訳にすぎない。キャバ嬢にちやほやお世辞トークしてもらうためにお金払うのと同じかもしれない。どうせ実らぬ思いだと分かっていても夢を見ることはできる、その夢に対してお金を払っているんだと。

いわば「夢を買ってる」と言っている人たち自身も負ける前提なわけです、結果が出る前の段階ですでに負けを受けれている状態。でもそれって何か変じゃないですか?もしかしたらワンチャン勝てるかもしれない、結果が出るまで勝負がどう転ぶかは分からない!という理屈を、負ける前提で口に出すのって変じゃない?

 

 

期待値45.7%ってつまり?

ということで、宝くじについてもう少し分析してみます。去年の年末ジャンボのデータを参考にしてみましょう。

 公式発表には「発売総額1,440億円・24ユニットの場合 ※1ユニット 2,000万枚」と書かれています。つまり2018年の年末ジャンボは

  • 1枚300円で販売された
  • 2000万枚×24ユニット、つまりトータル4億8千万枚が販売された
  • 売上の総額は4億8千万×300円=1440億円

というわけです。宝くじの期待値が45.7%ということは、1000人のうち457人は黒字になるのか?というと、決してそういうわけではありません。そんなに甘くない。

宝くじにおける期待値45.7%というのは「販売総額1440億円のうちの45.7%(658億800万)が1等~7等に振り分けられる」という意味です。同じ当選者というくくりの中においても、1等7億円を当てる人もいれば7等300円を当てる人もいるわけで、あくまで「勝ち組が得る賞金の総額が全体のうちの45.7%」というだけなのです。

1等~7等までの当選数を合計すると5338万3320枚です。4億8千万枚発行されたクジのうち5338万3320が当たりクジ、これはパーセントで言うと0.11121525%です。

細かい数字ばかりで頭イタくなってきたのでまとめます。

  • 300円で年末ジャンボを1枚だけ買った場合
  • 0.11121525%の確率で300円以上が当選する
  • 0.00000005%の確率で1等7億円が当たる

といった感じ。1000人のうち457人が黒字になるどころか、1000人のうち111人が赤字をまぬがれる程度の確率でしかありません。その111人のうち大体は300円当選でプラマイゼロですが、ごく僅かに何十万~何億円という当選額が混ざっているため全体のバランスとしては1000円払ったら平均して457円が帰ってくることになるわけです。

 

じゃあやっぱり夢しか買えないの?

今までのネガティブな数字や考察を聞くと「宝くじってやっぱり夢しか買えねーじゃん、だったらキャバクラで夢買うわ」って思ってしまうかもしれませんが、記事冒頭でも書いたように今回は「夢を買うのではなくマジで儲けるために買うのも無しではない」ことの説明に挑戦したい。それこそがこの記事の核心です。

 

2018年の年末ジャンボの当選内訳はさきほどリンクに貼った通りですが、ここでひとつ日本人の生涯賃金を参照してみよう。ユースフル労働統計によると、例えば大卒者が23歳~60歳までの37年間で稼ぐ生涯賃金は約2億7千万円らしい。もちろん人によって様々なのであくまで一例にすぎない。

ユースフル労働統計によると私たちは37年間で2億7千万を稼ぐんだ。そのペースで宝くじ1等の7億円と同額を稼ぐためには95年くらい働かなきゃいけなくなる。あるいは37年間で7億円を稼ぐためには年収を2.6倍にしなければならない。やってらんない。てか無理。

宝くじ1等7億円の当選確率はたった0.00000005%(2000万分の1)だけれど、95年間働き続けたり年収を2.6倍にブーストさせるよりはずいぶん現実的な数字じゃないだろうか?300円払えば2000万分の1の確率で年収が2.5倍になったり、58年分の有給休暇がもらえたりする、となればもうそんなの迷わず買いでしょ。

というか、1等を狙わなければならないわけでもない。前後賞の1憶5千万でもまったく文句なんてないし、何なら3等の100万でも鼻水垂らしながら喜ぶよ。

 

というわけで、宝くじを期待値だけで語るのは大いに間違っているわけだ。宝くじの本質は『本来なら到達不可能であろう領域への挑戦権』にあると私は考える。普通に生きていたらチャンスはほぼ0%しかないのに、宝くじを買えば0.00000005%のチャンスを得られるわけだ。何てこった無から有が生まれてやがる。デカすぎる。買うしかない。

 

・・・という話をキャバ嬢相手に話したところ「何それチョーヤバイ、うけるね~お兄さん頭いいね~」って感じで大好評でした。私は今まで宝くじ買ったことありません。

 

・・・という話自体が嘘です、そもそも私はキャバクラ行ったことすらありません。この記事の内容は1から10まで全て妄想です。